満ち足りない月





セシルは思わずビクッと体を震わせた。

リュエフの表情もいつの間にかいつもの笑顔ではなくキツい真剣な表情になっている。


“気付かれてる”

はっきりとそう思った。

背筋に汗が一直線にゆっくり通る。


あの目は何でも見透かしてるような目だ。

―――“アイツ”と一緒。



「私は……」

セシルは俯きながら言い始めたが、すぐに前を向いてリュエフを見つめた。


「たぶん好きなんだと思います」


「たぶん?」

リュエフは疑問そうに言う。


セシルはまた下を見ると、話し始めた。


「私、誰かにはっきりとした恋愛感情を持った事がなくて……。正直この気持ちが何なのかはっきりとは分からないんです」


リュエフはまだこちらを見つめている。


ちゃんと私の話を聞こうとしてくれてるんだ。

セシルは思った。


話したい。

そうも思った。



「はっきりとは分からない。でも…」