満ち足りない月





「キィィ…――」


扉が軋む音が後ろから聞こえた。


屋敷の中に差し込んでいた扉から漏れる月光がどんどん狭まり、消えていこうとしていた。


「えっ」


セシルが声を漏らすのと、扉が閉まるのは同時だった。



「ガチャン」



重い扉がしっかり閉まる音が屋敷に響き渡った。



一切の明かりは遮断され、屋敷の中を照らす光は皆無に等しい。



急な闇にセシルは見えない辺りを見渡した。



「誰?」


叫びに近いセシルの叫び声がホール全体に静かに響き渡った。


冷や汗が頬を伝う。



「それはこちらの台詞だよ、お嬢さん?」



突然、低く優しいような声がセシルの耳元で聞こえた。