満ち足りない月





キィィィ…―――


今度はもう少し長い音をしながら扉が軋んだ。


目の前に中の様子が広がる。



入ってすぐにある大きな階段。右と左の階段は大きく弧を描くようにしてまた交わっている。


屋敷にはやはり、明かりはない。


階段の上にあるものがセシルには分からなかった。



恐らく二階構造なのだろう。階段のあり方からして三階まではなさそうだ。


セシルは真っ暗闇の中を少しでも照らすため、扉を開けたまま、前へ進んだ。



大きなホールにセシルのブーツの音が静かに響き、闇に溶け合った。



不思議な場所だ。



ホール内を見渡しながら思う。


階段の下の右手と左手には扉があった。この二つの扉は奥の部屋に通じているのだろう。



――コッコッコ


固い床に当たるブーツの音が部屋を満たす。ほかには何も聞こえなかった。


沈黙が屋敷を支配した。


それがやけに不気味だ。


ホールの中央まで来るとセシルはもう一度辺りを見わたした。


人は住んでいないのだろうか。


しかし屋敷内は汚れ一つない。暗さのためかは分からないが、人が住んでいない屋敷がこんなに綺麗だろうか。



セシルは首を傾げた。