満ち足りない月





「ほんとね、咲いてるわ」


しゃがみながら白い花を見つめた。

と、ふいにラルウィルが白い花を数本、引きちぎった。


「これ、部屋に飾ろう。母さんはここに来るだけでも辛いだろう?でも部屋にあればいつでも見れる」


ラルウィルは花を手に持つとニカッと歯を見せた。


母は何も言わなかった。

ただ黙って千切られた花の場所を見ている。


ラルウィルは何も言わない母に?を浮かべながら次の言葉を待った。

冷たい風が横切った。


「ラルウィル、花も生きてるのよ」

母は笑いもせず、顔をしかめたりもせず、ただ芯のあるはっきりとした口調で言った。