満ち足りない月




猫は庭をゆっくりと見渡した。

そして顔をしかめる。


『甘ったるい匂いだ。お前の父親もこんな匂いをしていたな』


―――…

煙草の匂いが微かに風によって鼻を掠める。


『好きよ。この花達も貴方の事も』







「この庭も……遭った(あった)事が多すぎるな」


ラルウィルは薄く目を開けると呟いた。


そしてちらっと今もそこにあるその白い花を見つめた。



『―――母さん!』