満ち足りない月





風がそっと撫でるように花たちを揺らした。

ラルウィルの金髪の髪もさらさらと揺れる。



『ラルウィル、走っちゃ駄目よ。花が潰れちゃう』

まぶたを閉じると、いつも笑っているあの人の顔が浮かんでくる。

痛みでしかない過去の記憶。


思い出したくなんかない。
必要もない。


でもなぜいつも思い出す?


ラルウィルはまぶたを強く瞑った(つむった)。


花の香り。

息をゆっくりとするといろんな物が生きているのが分かる。





下から声が聞こえてくる。


『綺麗な花やな。お前ここに一人で住んどるんか?ガキのくせに贅沢な奴やな』