満ち足りない月





―――…

水が落ちていく音がする。

葉に当たってポタポタと水が滴り落ち、やがて土に染み込んでいく。


水やりの時間は好きだ。


もう何百年も毎日同じ事をしているが、こうやって命あるものに生きる力を注ぐのは何というか気持ちが良い。

何よりこの水が流れるサアアという音は遠い昔を思い出させてくれるのだから。


最初はその音はただの苦痛の音でしかなかったのに今は流れゆく音楽のように心地いい。


さすがに俺も少しは成長したのだろうか。

時々そんな事を考える。



シルバーの先の細いジョウロから水がポタポタとしか流れなくなるとラルウィルは改めて庭を見渡した。


屋敷の三分の一はあるだろう面積の大きな花園はそれは色とりどりに水を浴びてキラキラと光っているようだった。

まるで水を与えられて喜んでいるかのようだ。