満ち足りない月





ラルウィルは今まで飛んでいた意識を戻すと「あ、ああ…」と答えた。


「でも、この屋敷の前にあるのって庭園でしょ?こんな綺麗な庭園なんてあるの?」


セシルは額縁に飾られたその絵に指を滑らせながらラルウィルに言った。



「まあな。昔よりは全然咲いてないが」


ラルウィルはそう言うとすぐにその場を去った。


「庭園、か…」




『セシル、こんなすぐに枯れてしまうような物、捨ててきなさい。手が汚れるだけだよ』


ラルウィルの後ろ姿を見つめながら、セシルはぼーっと昔の誰かの言葉を思い出していた。


“物”か…