セシルは虫を人差し指に乗せたまま、そっと立ち上がった。 「生きてるものは好きよ。虫でも鳥でも動物でも」 指に乗せた虫を見つめる。 と、すぐに虫は羽根を広げて、開け放たれた廊下の窓へと飛び立っていった。 虫がいなくなった窓を見つめながらセシルはそっと口を開いた。 窓からの風が頬を掠める。 「彼らは自由だから……。いつだって私の友達で、私の憧れだったわ」 遠い昔を見つめるようにセシルは目を細めて窓を見る。 「あんな風に飛べる羽が欲しかったの。逃げる為に必要な羽が」