満ち足りない月





それからセシルとラルウィルは二人がかりで広い屋敷内を掃除した。

掃除の仕方をラルウィルが説明しながらセシルは一つ一つ丁寧にこなしていった。

掃除した事なんかないって言っていたのによく知ってるなあ…


セシルはそんな事を思うのだった。


屋敷内は本当によく汚れており、天井には蜘蛛の巣が、廊下には虫が這っていた。



セシルが廊下に飾られてある絵にかかった埃をはたいている時だった。

ポタっと、豆ほどの大きさの艶やかな緑色をした虫が落ちたのだ。


セシルはしゃがみ込むと落ちた虫の前に人差し指を置いた。


虫がセシルの指を這ってくる。


「ちょっと驚いたな。悲鳴をあげて虫なんて嫌いそうなのに」

隣りにいたラルウィルが言った。