満ち足りない月





今日からしばらく住まわせてもらうのだ。

自分だってラルウィルの為に何かしたい。


そんな気持ちからだった。

しかし気持ちを上手く伝える手段が思い付かないセシルは、自然と自身の思っている事とは違う言葉を出してしまうようになっていた。


それに何より、掃除の最中である今、ラルウィルには見られたくなかった。

きちんとせめてこの大広間だけでも掃除を済ませて、ラルウィルを驚かしたかったのだ。


「掃除ねぇ…、でもこれは少し水浸しすぎやしないか?」

ラルウィルは大広間を見渡しながらからかうようにふふふ、と笑った。