「それから俺は、無我夢中で走った!意味が分からないまま走って、走って……」



颯太の闇に揺れる瞳が、その時の恐ろしさを物語っている。



「それで、笛の音が鳴って、ようやく頭が冷静になった。鬼はどこかに去っていって、気付けば俺は全身傷だらけだった。」



腕や脚、顔にまで及ぶ傷を眺めながら颯太は言った。

そこで、颯太に変化があった。



「俺…許せねぇよ…」



恐怖の色が消え、瞳がより深い闇色へと堕ちていく。

腹の底から煮えたぎる怒りが、ふつふつと沸き上がってきていた。

膝に乗せている手が、グッと拳を作った。



「そういえば翔が、俺には100%助かる攻略法があるって…」


「このことだろうな。翔の奴…一体今まで何人を犠牲にしてきやがったんだ!」



怒りをあらわにする颯太の横で、何故か翼は冷静だった。




あぁ、そうか。

これで翔の言葉の意味が分かった。

『翼には真似できない』と言ったのは、馬鹿にしていたのか、褒めていたのか…




そう思案を巡らせながら、自分は何も言わず、颯太の話を聞いていた。