その後、響子は女子の部室に戻っていった。
時計を見ると、6時40分を示していた。
翼は、少し早いが、颯太を保健室に連れて行くことにした。
なにより、先の状況から、部活を終え部室に戻って来た翔に颯太を合わせるのはまずい気がしたのだ。
校舎に入り、まだ人気が少なく閑散とした廊下を歩く。
痛みによる疲れで体が重いのか、颯太の歩みは遅い。
翼も、それに合わせて歩みを進める。
「やっぱ、開いてねぇか。」
保健室まで来たが、やはり開いてはいなかった。
腕時計の表示は、まだ6時50分だ。
颯太は、深く息を吐きながら、保健室のドアに背中を預けて腰を下ろした。
「なぁ、颯太。」
ふいに翼が話し掛けると、颯太は「ん?」と顔を上げる。
視線が合うと、翼は改まった様子で颯太に倣って廊下に座った。
「朝練のことだけどさ、翔と何があったんだ?」
翼がそう問い掛けた瞬間、颯太の顔が強張った。
そして、視線をあぐらをかいている自身の脚に落とし、険しい顔で話し始めた。