「鬼が三体になった途端、コレかよ…」
「いや、違うな。」
颯太の言葉を否定し、翼は深刻な声で話し出す。
「正確には、二体でその人数だ。」
「どういうことだよ?」
「一体は、ずっと俺を追い掛けていた。つまり、13人は二体の鬼、どちらかによってやられたんだ。」
「また今日も追われてたのかよ。モテモテ人間翼くんだな。」
颯太は昨日のことを知っているので軽く受け流したが、響子は心配そうに翼を見ていた。
「とにかく、やばい状況だ。放課後練習で、どれだけ生き残れるか…」
翼の行き詰まった声音が、部室内を静まり返らせた。
しばらくの沈黙の後、口を開いたのは響子だった。
「あ、あのっ…牧野くん!そういえば、私、まだお礼言ってなかった。」
「お礼?なんの?」
翼がそうきき返すと、響子が、
「ジンクスの。」
と言い、首に掛かっているシルバーの鎖を手繰り、小さなプレートが付いたネックレスを見せた。