「翔…?」
翼が翔の名前を呼んだとほぼ同時に、颯太の体がピクリと動いたのが、担いでいる腕から伝わった。
そして、颯太は顔をゆっくりと上げ、翔を見た瞬間、ガラリと表情を変えた。
「お前…よくも…!」
いつもは明るくお調子者の颯太が、恐ろしい形相で翔を睨むと、低く唸るような声で言い放った。
颯太のこんな表情や声は、初めてだ。
「よく、のこのこと俺の前に出て来られたな…!」
さっきまでの弱々しい雰囲気は微塵もなく、獣が敵を威嚇するように目をギラつかせている。
「なんのことだよ?」
翔の軽い口調にカッとなった颯太は、傷のことも忘れ、暴れ出し、翔に飛び掛かろうとする。
「お前っ…ざけんな!」
「おい!落ち着け、颯太!傷が!」
颯太の傷口から、再びダラダラと血が流れ始める。
翼がなんとか押さえ込むが、颯太は尚も暴れ、翔につかみ掛かろうとしている。
「翔!悪いが、颯太から離れてくれ!」
このままでは颯太が危ないと考えた翼が翔にそう言うと、翔は颯太を一瞥し、何も言わずに去って行った。


