しかし、翔の返事は、翼の目を丸くさせた。
「いや?出くわしたさ。」
当たり前だと言わんばかりの声音で、サックリと答える翔。
「えっ?大丈夫だったのか?」
「見ての通りだ。」
翔は、そう言うと、パッと両手を広げた。
翼は、信じられないといった表情で翔をまじまじと見た。
翔の体には目立った怪我どころか、擦り傷一つない。
翔は、翼の想像以上に走りのセンスがいいのかも知れない。
努力型の翼と違い、翔はセンス型…
いわゆる天才型で、練習に熱を入れている所を見たことがない。
しかし、実際は部内で一番の走りを持っているのではないだろうか。
翼はそう思い、翔を見る目を改めた。
「鬼に出くわして無傷なんて…」
尊敬の念を込めた目で翔を見ると、翔はニヒッと笑った。
「俺には、100%助かる攻略法があるからな。」
「攻略法?」
「あぁ。悪いが、教える気はないぜ?教えても、どうせ翼にはできないと思うし。」
そう言った翔の笑顔が、いつもと違い、八重歯の見えない薄ら笑いだったことに、翼は何か引っ掛かった。
だが、翔のセンスが無いとできない技なのだろうと思い、問い詰めることはしなかった。


