翼はいつものように、徐々にスピードを落とし、ジョギングのペースで軽く走り、グラウンドに出た。
グラウンドには未だ誰の姿も見えない。
珍しく、翼が一番乗りのようだった。
翼は、グラウンドの端でストレッチをしながら、校舎から出て来る部員達を待つ。
まさか―…
翼の頭に不安が過ぎった。
しかし、一体は自分が引き付けていた筈だ、と自身に言い聞かせる。
残りの二体が、どれだけの悪行をこなしたかによるのだが…
「翼!」
そう考えていると、後ろから自分の名前を呼ばれ、反射的に振り返る。
「翔!無事だったか。」
茶色がかったふわふわの猫毛を揺らしながら、こちらに近付いて来たのは翔だった。
「翼も大丈夫そうだな。」
そう言って、翔は八重歯を見せて、ニヒッと笑う。
そんな、お気楽であっけらかんとした表情の翔を見て、翼はホッと胸を撫で下ろす。
「ああ。翔は鬼に出くわさなかったのか?」
恐怖の念が全く窺えない翔の表情や仕草を見て、翼は、答が概ね予想立てられている問い掛けをした。


