しぶきの上がる音と髪に掛かった水から、鬼が噴水に落ちたことを知った翼は、走り出した。

未だに完璧ではないが、翼の視界は回復の兆しを見せている。


狭まっているが少し開いてきた視界と、いつもの感覚を頼りに、翼は中庭を抜け、校舎の中へと入って行った。



「ハッハッハッ―…」



翼の呼吸は安定していた。

寧ろ、脚の調子を含め、鬼に襲われる前よりも良くなっている。


目の自由を奪われたことで、他の神経が研ぎ澄まされ、普段より集中力が高まっているせいかもしれない。



なんにせよ、翼は平生の走りを取り戻すことができたのだ。

鬼が後ろから追い掛けてくる様子もない。




腕時計は、5:50を表示していた。







もうすぐ、朝練が終わる。







しかし、集中し切っている翼は、気を抜くことはせず、時間が来るまで、しっかりと前を見据えて走り続けた。







集中―…


この集中力を、いつでも引き出せるようにならなければ…








そう決意を固めたのとほぼ同時に、朝練の終了を告げる笛が鳴り響いた。