《ゴツッ―!!》
鈍い音と共に、翼の蹴りが鬼に命中した。
スピードが加わっている為、かなりの衝撃になっている筈だ。
大きく、強靭な鬼の体が、グラリと揺らいだ。
よし…!
鬼を蹴り上げていた両足の膝を曲げ、今度は右足だけを伸ばし、再び鬼の体を強く蹴った。
その反動を利用して、鬼から数十センチ離れた場所に上手く着地すると、翼の心は、達成感と安心感に溢れた。
これで、鬼が倒れている間に、逃げれば助かる。
数秒の時間稼ぎができた。
そう思い、翼は再び走り出そうとした。
…が、翼の考えは甘かった。
鬼というものの、力の強大さを、十分に理解していなかったのだ。
蹴りを入れた瞬間は、鬼の体が確かに傾き、揺らいでいるのが見えた。
強い衝撃を与えたのだ。
そのまま倒れ込む…
と、思いきや、なんと鬼は、筋骨隆々の脚を駆使し、衝撃を押さえ込み、その場に踏み止まったのだ。
そして、走り出そうとしていた翼の眼前に、壁のように立ちはだかった。


