「頑張るしかない…か。」
颯太は、噛み締めるように、ぽつりと翼の言葉を反芻した。
そして、ゆっくりと意味を飲み込むと、拳を力強く握った。
「だよな。そうだよな!俺は…俺達は、頑張るしかないんだ!」
拳を見つめ、自身に言い聞かせる颯太の瞳には、強い光が宿っていた。
翼は、期待を裏切らなかった彼に対して、自己の選択が間違っていなかったという安心感と、解り合えていたという信頼感。
そして、ある種の誇らしささえ感じていた。
「翼!」
拳から視線を上げた颯太に、不意に名前を呼ばれる。
街灯の光を吸収して、颯太の瞳が力強い橙色に染まっている。
「俺達、頑張ろうな!相手が本物の鬼だろうが何だろうが、ぜってぇ生き残ってやろうぜ!」
歯を見せて笑う颯太は、いつも通り、自信に満ち溢れている。
「当然!」
翼も同じようにニカッと笑うと、何か合図をするでもないのに、同時にお互いの拳をガッチリと当て合わせた。
夜の闇が支配し、全てが呑み込まれそうな帰り道、僅かに光を放ち、コンクリートを照らす街灯の下で、二人は覚悟にも似た決意を固めた。