俯く颯太に、翼は最初、優しく励ます言葉を掛けようとした。
『俺達にはどうにもできないことなんだ』とか、『颯太の気持ち、わかるよ』だとか…
が、しかし、それらの言葉は全て、言い訳や同情にしか聞こえないような気がして、開きかけた口を再び閉じた。
そして、強く唇を結び、自分自信をも戒めるように言葉を放った。
「頑張るしかない。」
厳格な雰囲気を纏う翼の言葉に、颯太は顔を上げる。
「悔やんだって、恐れたって何にもならない。だから、俺達は頑張るしかないんだ。」
過去は変えられないし、現実はどこまでいっても現実だ。
逃げようとも追い掛けて来て、俺達を闇に引きずり込もうとする。
けれど、それでも俺達は逃げることしかできない。
ならば、頑張るしかない。
強く、強く走り抜いて、闇を振り切る程の速さで最後まで走り切るしかないんだ。
颯太には、厳しい言葉をあえて掛けた。
ここで立ち止まる奴なんかじゃないってことを、俺は知ってる。
翼は、様子を伺うようにして颯太を見る。