身構えるようにして鬼城の言葉を待つ翼。
「まぁ、今日のところは解散していいぞ。」
しかし、次に鬼城の口から出た言葉は、全く恐怖の意味を持ってはいなかった。
拍子抜けする翼だが、ちらりと見た鬼城の表情を見て気持ちを改めた。
恐ろしい程に怪しく笑っていたのだ。
口角を上げ、確かに笑っているような表情なのだが、目は少しも笑っていなかった。
闇をひたすらに見据えているように暗く、その闇を楽しむような目をしていたのだ。
しかし、そんな表情を見れたのはほんの一瞬で、背中に悪寒が走り終えるよりも前に、すぐに元の顔に戻っていた。
「明日の朝練は、いつも通り5時からだ。遅れるなよ。」
鬼城はそれだけを言うと、さっさとグラウンドを後にした。
集合していた部員達に背を向けて去って行く為、鬼城の表情をもう一度確認することは不可能だった。
翼は、さき程垣間見た鬼城の表情が気になって仕方がなかった。
悪い予感を抱きながら、その日の部活動は終了となった。


