「鬼…なんだな。何があった?」


「…何って、鬼ごっこしてただけさ。」



翼は、肩を掴んでいる腕を退かすように颯太に仕草で促し、ぶっきらぼうに言った。


颯太の不安で心配そうな顔を見るのは辛い。



「……?」



翼の言った“鬼ごっこ”の意味が理解できず、首を捻る颯太。



「わからなくていい。そうだ。俺から颯太に一つアドバイス。」


「アドバイス?」



オウム返しにたずねる颯太に、翼はこくりと頷いた。



「特別棟の最上階の高さからじゃ、流石の鬼も飛び降りられないぜ。だから、いざとなったらそこから飛び降りるんだな。」


「なんでそんなこと…?」



益々意味がわからないといった顔をする颯太がそう聞き返したところで、集合の合図がグラウンドの真中で鳴った。



「集合だ。行くぞ、颯太。」


「あ、あぁ。」



まだ考えている様子だった颯太を急かし、グラウンドの真中へと駆けて行った。