《キーンコーンカーンコーン》
しばらくして、鬼ごっこ終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
その音に、翼はホッとする。
疲労しきった翼にとって、いつもの歪な音が神聖な鐘の音のような気さえした。
走り続けていると時間が長く感じ、永遠にチャイムが鳴らないのではないかという思いさえ浮かぶ、この恐怖の部活動。
そんな部活動の終了を告げてくれるなら悪魔が鳴らしていようが、天からの救いのように思えてしまう。
翼は走る速度を緩め、息をゆっくり落ち着かせていく。
そして、いつものようにストレッチも行う。
翼の両足は、ダウンをしている時でさえ、まだ震えを止められずにいた。
鬼から逃げている最中は必死でわからなかったが、膝を中心に微かに震えている。
それほど、“死”というものへの恐怖は強大だった。
「はは…だせぇな。」
翼は誰に言うでもなくそう呟くと、両膝をパシンと軽く叩き、グラウンドへと向かった。


