「ハッハッハッ…」



荒い呼吸音を追うようにして聞こえる、



ガスッガスッガスッ!



という、鬼の足音。

鬼にターゲットとして絞り込まれ、追いかけられるのは初めてだ。



翼は言葉などでは言い表せないほどの焦りを感じていた。



そわそわ?

ざわざわ?

いらいら?



そのどれもが、翼の心情にぴたりと当てはまってはいなかった。

胸の奥がいらいらとざわつき、心臓はどくどくと小さく速く脈打ち、喉は空気がつっかえたように息苦しい。


そんな、なんとも言い表せない焦りと、自分はもっと速く走れる筈なのにという悔しさにも似た感情を宿しながら、翼は必死に走り続けた。


なぜか脚がふわふわとした感覚になり、空回りばかりしているような気さえしてしまうこの現状。

腕時計をチラリと見ると、残り時間はまだ30分以上ある。


次第に無くなる体力と近づく足音。



どうにかして鬼をまかなければ、やられる。



翼はそう思い、良い案はないかと必死に頭を働かせる。

しかし、鬼の足音が恐怖を煽り、その思考を邪魔する。