いつものように翼がコース通り校内を走り、一周目を走り終え、再び自分のクラス前廊下に戻ってきたときだった。
ゾクリ…
そう表現する以外、ぴたりと当てはまる擬態語が見つからない程に、恐ろしい悪寒が背筋に走った。
悪寒を感じながらも冷静に走り続ける翼の耳が次に捕まえた音は、明らかに人が出す音ではなかった。
「グッグッグルルー…」
獲物を狙うケモノが出すような呼吸音に、嫌な予感が確信へと変わる。
その悪寒と予感の理由を確認すべく…
いや、むしろ嘘であって欲しいという願いから、翼は後ろを振り返った。
「……っ!!」
振り返った瞬間、後悔した。
脚が震え、上手く走れなくなる。
呼吸は急に荒くなり、リズムは完全に乱れた。
―…鬼だ。
急いで向き直り、二周目の為に残していたエネルギーも構わず使い、スピードを上げ、鬼から逃げることだけを考えた。
やばい。
やばい、やばい、やばい!
頭には警告音のように、その言葉だけが、ガンガンと鳴り響く。


