そして、腕時計が6時を表示すると同時に、校内放送でチャイムが流れた。
《キーンコーンカーンコーン》
錆びた鐘で鳴らしたような歪な音が不気味に響くと、辺りの空気が一変して明るくなった。
比喩的なものではなく、窓から差す陽の光や、霞んでいた物の輪郭がはっきりとして、夢から覚めて現実に戻ってきたという感覚だ。
翼は、その様子を確認し、ようやく走るスピードを緩め、徐々にジョギングのペースへともっていく。
「ハッハッ…ハァ…ハァ…フゥー…」
そのままダウン代わりのジョギングと、ストレッチを行い、呼吸を整えた。
走り続けて疲れ切った筋肉をほぐす為にも、ストレッチは重点的に行う。
ここまでして、ようやく終わったという気分になれる。
ダウンが終わり、陽の光が筋になって窓から差し込んでいる廊下を歩き、グラウンドへと向かった。
グラウンドには、すでに何人かが集まっている。


