一方、当の本人である翼を含む陸上部員たちは、校舎に入り、それぞれ決めた場所で待機していた。

校舎内でのスタート地点は個々に好きな場所を選べ、それは毎回変えることができるのだ。


翼は、いつも自分の教室前廊下をスタート地点にしている。

教室前廊下で、鬼城が鳴らす開始の合図を待った。



《ピィーッ》



不意に、鬼城が鳴らす甲高い笛の音が響き渡った。


始まった。


翼は高すぎる笛の音に顔をしかめると、床を蹴り、走り出した。




タッタッタッ、という小気味よいリズムで翼は走る。

開始直後の為、呼吸もしっかり整っている。



翼には、校舎を回る自分なりのコースがあった。

ただ行く当てもなくぐるぐる校舎を回っているのと、コース通りに走るのとでは、精神的にも肉体的にも違いがあるからだ。

コースが決まっている方が、無駄に頭を使わなくても良く、走ることに専念できた。