「全員そろったな。」
全員が集合したことを確認した鬼城は、その素早さに満足したのか、今朝より少し機嫌がよかった。
「練習を始める。校舎に入れ。」
そう言い放つと、鬼城は腕を組みながら、部員たちがぞろぞろと校舎に入って行くのを眺めた。
鬼城は、この光景を見るのがたまらなく好きだ。
緊張。
不安。
恐怖。
焦り。
そして、振り絞るようにして出す、ほんの少しの自信。
絶望とも言える負の感情が、部員たちの表情からはっきりとうかがえる。
そんな表情を見るのが好きなのだ。
苦しむ顔をもっと見ていたい、と鬼城は思っている。
また、部員たちにそんな表情をさせているのは自分だと思うと、大きな優越感に浸れた。
部員たちは皆、いつも同じ恐怖の表情で部活をするのだから、そう思っている鬼城にとって陸上部は最適の場所である。
しかし、例外はいた。


