そんな彼女を見て、翼は少し考える素振りをすると、響子に言い聞かせるようにして話し出した。



「皆川に必要なのは、自信だよ。自分はやれるって信じ込まないと。自分を1番信じてやれるのは、自分だろ?」



響子は黙って真剣に翼の話を聞いている。



「あとは、きっかけ。人によって色々だけど…。例えば、俺だったらジンクスとか。」


「ジンクス?」


「あぁ。走る前には必ずする。願掛けみたいなもんで、それをすれば、成功するような気がするんだよ。」


「へぇ…。牧野くんは、どんなジンクスなの?」



響子は興味深そうに、先を促した。



「俺は、自分の脚に十字架を描くんだ。こんな風に。」



そう言いながら、翼はしゃがみ込むと、土踏まずの辺りから膝にかけてを人差し指でスッとなぞった後、親指以外の4本指でふくらはぎを横になぞった。