翼は、響子の言葉に愕然とした。
「まさか…。この現代社会に鬼がいるはず…」
ない、と続く筈の言葉は、不安と絶望と恐怖に押し潰されて、蚊の鳴くような声になって消えた。
「でも、私…確かに見たの!」
未だに信じられないといった表情を見せる翼に、響子が念を押すようにして言う。
「今日の朝練で、鳴海ちゃんが捕まったとき、私、近くにいたの!鳴海ちゃんを捕まえた後は、私を追いかけて来て、それで鬼の正体を見たの。」
そういえば、川瀬鳴海の悲鳴を聞いた後、鬼の気配が遠ざかった。
翼は、話のつじつまが合うことから、響子の話を信じ始める。
「そのすぐ後に、6時のチャイムが鳴ったから、私は、なんとか助かったんだけど…。」


