「ここじゃ駄目なのか?」


「う、うん。大事な話で…。私…、私、見ちゃったの…!」



響子は、真剣な目で翼に話している。

その真剣に光る瞳の中には、心なしか不安と恐怖が渦巻いているように見える。



「見たって何を?」



そうきき返した時だった。



「おい、何をしている!もうすぐ授業の始まる時間だぞ!とっとと教室に入れ!」



翼は、聞き覚えのある、その蔑むような冷ややかな声に振り返り、声の主を睨む。

鬼城だ。



「す、すみません!」



響子は怯え切った表情で一声謝ると、勢いよく頭を下げた。



「謝る暇があるなら、速く教室に入れ!」



「は、はいっ!」


そして、去り際に翼に、



「じゃ、じゃあ、続きは、昼休みに屋上でね。」



と言うと、パタパタと早足で自分のクラスへと入っていった。