「きゃぁぁあーー!!!」
誰かの悲鳴が聞こえても、牧野 翼(マキノ ツバサ)は走り続けた。
「あぁぁぁ!あぁっ!!だずげ…」
助けを求められても構うことなく走る。
もう手遅れなこともあるが、他人を構っている余裕など今の彼にはなかった。
もし、彼以外の人物がこの場にいたとしても、それは同じだろう。
さっきから彼の頭は、走り続ける為の電気信号と、それに対しての喝を入れる言葉を発信するだけで、それがただひたすらに繰り返されていた。
「ハァ…ハァ…っ!」
走れ。走れ。走れ。走れ。走れ。
ただ、ひたすらに走れ。
「ハァ…っくハァ…!」
落ち着け。
息を乱すな。
リズムを作れ。
テンポを守れ。