前の階段から現れたそれは、確かに絶望であった。



ゆらりと大きく身体を揺らして現れたのは、鬼。





「きゃぁ!」





響子が小さく悲鳴を上げだ。





やられた。


確かに鬼は後ろに居たが、いつの間にか減った気配に気が付かなかった。

後ろを振り向かずに走ったのが裏目に出た。

しかも、挟み撃ちは奴らの十八番ではないか。


油断した。

甘かった。






後悔しても状況は変わらない。



前後を鬼に囲まれて、翼達は止まらざるを得なくなる。







「牧野くん……どうしよう。」





目線は鬼を捉えたまま、響子は不安げに問い掛けたが返事は無い。


どうしようもないのだ。答えようがない。


こうなれば、助からない。



前回、翼が助かったのは殆ど奇跡だ。

今回はまだ10分も時間がある。

逃げ場もない。



鬼と真正面からやりあえる者などいない。







ここまでなのか?


ここで二人共死ぬのか?






そんな事しか考えられなくなった時であった。







「鬼さんこちら!手の鳴る方へ!」






そう叫ぶ声がした。