手を離すと響子は翼の半歩後ろに着いた。
息は大分上がっているが、フォームは落ち着きを取り戻している。
腕時計を見た。
ーー5:45
もう一度彼女に目を向ける。
このままでは先に彼女の限界が来そうだ。
「あと15分だ。いけるか?」
響子は、ふるふると首を振る。
「ハッハッ!このスピードじゃ……あと5分が限界……っ!」
「分かった。次の奴に囮になってもらう。」
「ムリだよ!鬼は私を狙って……!」
「大丈夫。」
力強くそう言った翼に響子は口を噤む。
「あと2人抜けば木崎だ。あいつもリレーのメンバーだ。」
「あっ……!」
「皆川の言う通り、鬼がリレーのメンバーを狙っているなら、木崎にだって注意が向く筈だ。」
翼は親指で後ろを追って来ているであろう鬼を指した。
響子は真剣な目で翼の言葉を追っている。
「今、鬼の狙いは三体とも皆川だ。一体でもいいから木崎に行ってくれればラッキー。生き残れる率が上がる。」
確実では無いが、これが今出来る最善の手だ。
とにかく、彼女の体力が尽きる前に木崎に追いつかねば。
「行けるな?」
「……うん!」
力強く頷く彼女の瞳には、あの大演説の時の様な強い意志が宿っていた。
希望と翼への信頼が、彼女の心に再び火をつけた。
「生き残るぞ。」
「うん!」


