「間に合った!」
息を切らし、額にはいくつも筋を作って汗が流れている。
「……牧野くん!」
翼は響子の手首を掴んだまま走り出した。
「……っひっく!……っ!」
後ろから嗚咽混じりの呼吸が聞こえるが、今は止まっていられない。
「牧野くん……!たっ、助けてくれる……って、しっ信じて……たっ!」
緊張の糸が切れたかのように、響子は涙をありありと流す。
「皆川……落ち着け。まだ助かった訳じゃない。」
翼も心を落ち着けたいのは山々だが、鬼達はすぐ後ろを追いかけて来ている。
冷静に思考を張り巡らさねば。
「呼吸を整えないと。大丈夫。一度息を深く吸って……吐く。そう、ゆっくりでいいから。」
「……っふ、ハッ……ハァ!フゥー、ハッ!」
小刻みに震える呼吸はなかなか言うことを聞かない。
「焦らなくていいから。そう。徐々にテンポ上げて。」
「……ハッ!ハッハッ、ハァ!」
涙も治まったのか、大分呼吸が落ち着き、自然とスピードとフォームも安定してきた。
「よし。大丈夫だな。手、離すぞ。」
「うん。」
響子は、短くだが返事を返せる余裕も戻っていた。


