「牧野くん!」






鬼をすり抜けて聞こえた皆川の声に安心するのも一瞬、鬼に阻まれてこれ以上彼女に近付く事が出来ない。

いくら鬼が自分を無視したからといって、三体が寄り集まった体積は相当なもので、この間をすり抜けることは難しいだろう。




しかし、悠長な事は言っていられない。

意を決してスピードを上げ、鬼へと近付く。





三体が固まると廊下は殆ど埋め尽くされてしまっている。

タイミングを見計らって、僅かな隙間を見つけるとそこへ突っ込んだ。






「……っ!」






ダメだ。

鬼の後ろ脚が地を蹴りあげると、こちら側に爪が向く。

この速さで引っ掛けられれば大怪我は免れない。






「……っくそ!」





「牧野くん……っハァハッ!……私、もう……もう……!」






そこに皆川がいるのに。

この壁を越えれば助けられるのに。






「諦めるな!」






声を張り上げる。






「次の階段まで走り続けろ!必ず助けに行く!」






遠回りになるが仕方がない。

皆川を信じるしかない。






翼は2段飛ばしで階段を駆け上がった。