荒い鼻息がねっとりと頬を撫でた。



次の瞬間、肩に掛かっていた重みが無くなり、今井の身体が宙に浮いた。





「ひっ!うぁぁぁ!!」





鬼が片手で今井の胴を掴み持ち上げたのだ。

いかに大きな四肢と言えども、人間の胴が収まる程の余裕はなく、殆ど握り潰すようなかたちだ。

今井の顔はみるみる青ざめ、喉元は薄らと血管が浮いている。






「いっ……いやだ!死にたくない!死にたくない!」





今井は力無く鬼の手を叩く。




しかし、おかしい。

そのまま握り潰すのかと思いきや、今井の顔を覗き込むだけで動かない。





「おい!離せ!」





それならばと、翼は横から鬼に体当たりをする。

例によってびくともしないが、鬼の目がギョロりとこちらを向いた。



すると興味が無くなったのか掴んでいた今井の胴を適当に放り投げると、今度は翼はの顔をまじまじと見てきた。




しかし、すぐに顔を逸らすと後ろについて来ていた他の鬼に目配せのような何か合図をした。

その証拠に、鬼は他の2体を引き連れて、翼達には目もくれずに廊下の先へと走り去っていった。