翼からも一連の流れは見えていた。

今井は目の前の物体から目が離せず、ただ口をわなわなと震わせその場に立ち尽くしてしまっている。





「今井!」





翼は慌てて駆け寄る。






「行け!走れ!」






そう叫び彼の背中を強く押すが、脚に力が入らないのか小さく2、3歩進むとへたりと座り込んでしまった。





「おい!しっかりしろ!」





腕を掴み、どうにか引き上げようとしたその時であった。

聞こえてしまった。





グァッグォグルルー……





あの、おぞましい呻き声が。

声だけではない。

グチョグチョと耳につく肉を喰らう音、血を啜る音、興奮した鼻息。


怖々と階段へ目を向ける。





「ーーっ!!」





叫び声すら出なかった。

この世の物とは思えない光景が、日常を過ごすこの場所で広がっていた。




高橋の下半身は鬼に咥え込まれ、ミシミシと骨を軋ませて人形のようにぐったりしていた。

口からはみ出た上半身には他の鬼がおこぼれを貰うために集まっている。

どちらかが、先程の腕を食いちぎり飛ばしてきたらしい。

もう一方の腕も、今まさにぶちりと引き抜かれているところであった。