決められたペースで廊下を走る。
呼吸も問題ない。
ただ、後ろを走る皆川が気になって仕方がない。
彼女は今どんな気持ちで走っているのだろうか。
生きる事を諦めてはいないだろうか。
静けさと相まって、余計な事まで考えてしまう。
彼女と鬼をなるべくなら対峙させたくはないが、翼一人ではどうにも出来ない。
前回は開始からしばらく続いた沈黙に不安さえ覚えたが、今はただこの静けさが続いて欲しいと願う。
しかし、願いは叶わないのがこの部活のセオリーらしい。
叫び声こそ聞こえなかったが、前方が少しざわついている雰囲気を感じ取り、翼は目と耳を研ぎ澄ます。
遠くのようだ。
ほんの僅かに違うペースの足音が聞こえるだけで、他は何も分からない。
腕時計を見ると、まだ開始から5分も経っていなかった。
小さく舌打ちをして、前から逃げてくるであろう部員を待ち構えた。


