「ごめんね、私……いつも弱音ばっかりだね。」





伏し目がちだった彼女が、パッと顔を上げて翼の方を向く。

何度も顔は合わせている筈なのに、久しぶりに目が合った様な気がする。






「牧野くんの前ではダメなの。しっかりしなきゃ、頑張らなきゃって張り詰めてたのが緩んじゃうの。ごめん……ごめんね。」





そう言うと、視線を斜め上へと逸らした。

こみ上げてくるものを必死で抑え込んでいるらしく、彼女の口はしっかり結ばれて少し震えていた。




「いいよ。俺の前では。」




「え?」




ぽつりと放たれた翼の言葉に、響子は視線を戻した。





「ずっと頑張ってたら疲れるだろ。だから、なんつーか、俺と喋ってる時ぐらいは弱音でも愚痴でもなんでも吐けばいいよ。」




「でも……。」




「いいんだって。俺も副部長に協力させてよ。この部活には皆川が必要なんだ。」





これは本心であった。

決してお世辞や勇気付ける為の方便では無く、個々で立ち向かうのは無謀といえるこの状況では彼女のような皆を纏められるリーダーが必要だ。

彼女を欠いては、再びあの地獄が始まるだろう。


だから、何としてでも彼女には生き抜いて欲しかった。