颯太と別れ、自分のスタート地点に向かう。
必然的に響子と顔を合わせるのだが、翼は些かその事に緊張していた。
最近の彼女は頑張り過ぎているせいか、情緒不安定気味のように思う。
リーダーとして力強く振舞ったり、一人の少女として不安に揺れる涙を流したり、翼もどう対応して良いのか迷う事が度々あった。
接し方を間違えてしまえば今にも崩れ落ちてしまいそうで、繊細な彼女との会話は気を抜けない。
「牧野くん……。」
もう既に自身のスタート地点で待機していた響子に声を掛けられて、翼は探る様に彼女の顔を覗き見た。
「皆川……大丈夫か?」
表情が上手く読み取れずに、当たり障りの無い言葉を選んでしまう。
「うん。みんなが居るから。」
「そうか。」
静かにそう返されれば、更にどんな言葉を掛ければ良いのか分からなくなる。
素っ気なくしたい訳では無いのに。
少しの間、沈黙が続いて、響子がでも、と続けた。
「やっぱり怖い。怖くて仕方ない。今度こそ私の番なんじゃないかって……。」
泣いてはいなかった。
ただ、静かにそう言った彼女の表情からは、仲間と共に立ち向かいたいという気持ちと、今すぐにでも逃げ出したいという気持ちのせめぎ合いが伺えた。
この葛藤と恐怖に終わりは無いのだろう。
どれだけ勇気づけられても、どれだけ成功しても、何度助かったとしても、生き残った限りまた次へ立ち向かわなければならない。
その状況が、どんどん彼女の精神をすり減らしていた。


