「でもよ、なんなんだよな鬼城のやつ。」
さすがの颯太も気になっているようで、走りながら翼の横に並ぶと訝しげに話し掛けてきた。
「いつも仁王立ちでじっとりって感じなのに、さっさっとどっか行っちまってよ。あいつ、なんか仕掛けてくる気か?」
「だろうな。」
「え?ど、ど、どうすんだよ?」
予想以上に翼の答えが断定的であり、動揺した颯太が不安げに顔を向けてきた。
「……。」
「おい、翼!」
沈黙に不安を煽られ、颯太の表情には焦りさえ浮かぶ。
しかし、翼も鬼城の考えなど到底計れない。
「落ち着け、颯太。」
「で、でもよ!」
「あいつの考えなんて誰にも解らない。俺達は今やれる事に集中すべきだと思う。」
「……わかった。」
「俺達を動揺させる作戦かもしれないし、とにかくあいつにばかり気を取られないようにしないと。」
「そうだな。集中だ、集中!」
颯太は自分の頬を両手で軽く叩いて頭を数回振ると、少し落ち着きを取り戻した。
「じゃ、俺はこっちだから。」
「あぁ。気をつけろよ。」
「おう!翼もな!」