翌朝、部員達はいつもより少し早めに登校すると、女子を含めた全員が部室の前では輪を作っていた。
「今日の朝練も、昨日と同じ作戦でいいかな?」
そう仕切り始めたのは響子だ。
あれからの彼女は本当に副部長らしい振る舞いになった。
翼の前では弱い一面も見せていたが、大勢の前では気丈な態度でいた。
また、昨日の成功が彼女を更にそうさせていた。
「もちろん!」
「やらない理由がねぇよ!」
全員一致の答えに安心したように小さく息を吐く。
「ありがとう。えっと、走る順番はどうする?昨日、不安なところは無かった?」
特に無いのであろう、部員達は首を捻るが何も言わない。
「そっか。牧野くんはどう思う?」
急にそう言われて驚くが、最近は男子の代表という形に自然となっているらしく、本人もそれは感じていた。
「いいんじゃないか。成功してるんだから、そのままで問題ないと思う。」
「そうだね。じゃあ、みんな今日も昨日と同じ段取りで!頑張ろう!」
そう締め括ると、部員達は大きく返事をして、グラウンドへと歩き出した。
もう、待っているだろうか。
どんな顔をしているのだろうか。
何を考えているのだろうか。
他の部員達はやる気と自信はに満ちていたが、翼だけはそんな不安混じりの考えを巡らせていた。