「お〜い!翼ぁ〜、皆川ぁ〜!」
向こうから少し間延びした声でゆるゆると手を振りながら近づいてくるのは颯太だ。
彼もまた、自分達の勝利を確証しているらしい。口元はニヤニヤとしていて、普段から緊張感が足りない彼だが今はもう欠片も無くなっている。
「遠藤くん!やっぱり無事だったんだね!」
いつもよりテンションが高いようで、翼が何か言うより先に珍しく響子から話し掛けていた。
「当然!なぁなぁ、もしかしてこれって作戦大成功ってやつ?」
2人が妙に言えなかった言葉を簡単に放り投げて寄越す。そんな所が、彼の短所であり長所なのかもしれない。
放たれた言葉に一瞬面食らったかのように固まると、2人は顔を見合わせて小さく笑いをこぼした。
「なになに?なんだよ〜。」
「いや、お前のそういう所好きだよ。」
「え?なにが?俺、褒められてる?」
翼では、はぐらかされかねないと響子に答えを求めた。
「ふふふっ。褒めてるよ!」
「なら、いいや。も〜う、翼くんたら、照れるじゃん。」
肘でぐりぐりと翼の脇腹を攻めると、パシリと手で払われる。
「やめろよ、気持ち悪いな。」
そう言いながらも、顔は笑っている。
「ちぇ、冷たいなぁ。冷徹人間翼くんだよ。まぁいいさ。はやく行こうぜ。みんなでお祝いしねぇと。」
まるでスキップでもするかのような軽やかな足取りでグラウンドへと歩き出す颯太。
2人はもう一度顔を見合わせて笑うと、彼に続いて校舎を後にした。


