鬼との距離が一定になるようにスピードのギアを上げていく。

追い付かれるわけにはいかないが、離れ過ぎるわけにもいかないのがストレスだ。


しかし、自分は今他の部員全員を守る為に走っているのだと考えれば不思議と地を蹴る足に力が入る。

今までには無かった感覚だ。

自分の為ではなく仲間の為に走る事への責任からくる気持ちの充足感が、不安に埋め尽くされていた心に温かみをもたらしてくれているようだ。



次の皆川まで、必ずバトンを渡そう。

そして全員で助かろうという、忘れかけていた連帯感がより一層の力になる。







角を曲がり、渡り廊下の直線へと出る。

鬼の足音と自分の息遣い。

その先に誰かの気配を感じた。



皆川だ。

目を凝らして彼女の表情を読み取る。

こちらには気づいている様だ。

強ばった表情で胸元のネックレスを両手で掴んで立ち止まっていた。

翼の後ろを凝視して固まっている。






「走れ!」





短く叫ぶと、響子は肩をびくりと揺らして思い出したかのように向きを変えて走り出した。


翼はもうひとつギアを上げて鬼から少し離れると、彼女の隣に並んだ。