いつもと違うペースで廊下を走って行く。
道順も違う。
だが、気持ちがそわそわと浮つくのはそれらのせいだけではない。
怖いぐらいに静まり帰り、不気味な平穏が校舎を包み込んでいる。
時計を見遣れば開始から既に20分が経過していたが、何も変わった事は無い。
誰かの叫び声もなく、鬼の気配も感じない。
何か起こってもおかしくはないのだが……
今はどんな状況なのだろうか?
本当に自分の前には同じペースで走る誰かがいるのだろうか?
後ろの皆川は?
何事もなく走り続けているのだろうか?
あまりにも静かすぎる校舎に不安ばかりが募り、スピードを早めてみようか、緩めてみようかという考えさえ過ぎるようになる。
部員を信頼していない訳ではないが、確かめて安心したい気持ちが膨らむ。
何も起こって欲しくは無いのに、何も起こらないと不安になるのは何故だろうか。
もやもやと息の詰まる気持ちと葛藤している時であった。
誰かの叫び声が鼓膜を揺らし、遂にその静寂は破られた。


