そして放課後。
これまでとは少し違う緊張と不安とが入混じり、部員達の口数はいつも以上に少ない。
鬼城に対してもどこか注意が逸れている。
そんな雰囲気に気付かない筈もなく、鬼城の眉間は皺を作っていたが、何か言う訳でもなく、いつも通りに事を進めていた。
「練習を始める。校舎に入れ。」
いつもの一言をさらりと告げると、何か思案する様子で部員達が校舎に入っていくのを見届け、自身もどこかへと向かった。
一方の翼達も、そわそわと落ち着かない様子で校舎へと向かう。
いつもはバラバラに校舎へと入っていくが、今回は纏まって同じ入口から各々のスタート地点へと散らばっていく。
交わす言葉は少ないが、互いに目を合わせたり、頷いたりと、確認し合っていた。
「じゃ、俺はここだから。頑張ろうぜ!」
颯太が足を止めて片手を上げる。
とうとう隣を歩くのが響子だけになった時、翼はようやく口を開いた。
「皆川の後ろには俺がいるから。前には颯太だっている。」
それでも、まだ表情は暗い。
響子の震える手には、あのネックレスがしっかりと握られている。
「大丈夫。皆川は生き残る。俺が必ず生き残らせてみせる。信じてくれ。」
ゆっくりと力強くそう言うと、震える彼女の頭をポンと撫でた。
響子は驚いて顔を上げる。
「牧野くん……。」
「死なせない。絶対に。な?だから、信じて走ってくれ。」
「……うん。ありがとう。ね?もう1回。」
「……もう1回?」
「頭……撫でて欲しい。そしたら……きっと頑張れる。」
恥ずかしそうに下を向く彼女の頭を翼は、優しく撫でた。
「大丈夫。大丈夫だ。」


