ーーパチ……パチパチパチ!
少しの間を経て、不意に聞こえたのは手を叩く音。
隣を見ると、颯太がにやにやしながら緩く拍手をしていた。
「さっすが副部長!そこまで言われたら、やるしかないっしょ!なぁ!」
先程の暗い表情は一変、いつものお調子者へと戻っていた。
軽い調子でそう言えば、他の部員も、
「……そうだな。どうせなら、やってみるか!」
「他に案がある訳でもないし……。」
「副部長にそこまで言われたら、やるしかないよね!」
口々に賛同すると、小さかった拍手は徐々に大きくなり、響子へ向けた大きな賞賛の嵐へとなっていった。
「あ……あ、ありがとう!」
胸の前でしっかり握られた手はそのままに、響子は声を震わせてお礼を言った。
そんな彼女へ向けて、翼も力強く拍手をした。
初めて部員全員が一つになれた気がする。
今までの何倍のパワーだって出せそうだ。
「牧野くん。詳しい事を決めたいんだけど………。」
「そうだな。まず、走る順番を考えないと。力の配分が均等になるように。」
「うん。そうだね。それで……。」
その後は、怖いくらいにすんなりと話が進んだ。
皆が、やってやろう!という士気を滾らせて、肯定的であった。
このモチベーションなら、本当に、あの鬼城に対抗出来る気がしていた。
しかし、いつまでもグラウンドに残っている翼たちを、奴が見逃さない訳がなかった。
校舎から鈍く光る二つの目は、しっかりと彼らを監視していた。