互いの顔を見合わせる者。
下を向いて考え込む者。
翼が一人一人の顔を確認すれば、殆どが目が合った瞬間に逸らされる。
答えを急いているつもりは無いが、そう思わせてしまうならと、翼は腕を組み瞼を閉じた。
どれくらい沈黙が続いたのかは分からない。
「私は賛成。」
小さく呟いた声に反応して、瞼を上げると、響子が両手を胸の前でしっかり握り締めてこちらを向いていた。
「裏切られたらって思うと恐いよ。でも、それ以上に死にたくないって思う。それに、誰も裏切らないって信じたい。ここまで一緒に頑張ってきた仲間だもん!」
次第に力強くなる声に、部員全員が圧倒されていた。
ここまではっきりと自分の意思を主張する姿は初めて見る。
翼でさえ、いつも気弱でびくびくしている頼りない副部長だった彼女が、今はリーダーの様に周りに話し掛けている事に驚きを隠せないでいた。
「それに、みんな他に何か良い案がある?牧野くんが話した作戦より、確実で、みんなが生き残れるような。」
響子は全員の顔をゆっくりと見た。
口を開く者はいない。
「だったら、やってみようよ!かけてみようよ!この作戦に!生き残ろう!みんなで!」
肩を揺らして叫ぶ様にそう言い切った。